こんにちは。
CAMOSスタッフのNAOです。
前回の「ワインの学び② | アメリカ合衆国(オレゴン州・ワシントン州・ニューヨーク州)」はいかがでしたか?
寒い環境の中でも湖による蓄熱や山脈の雨陰による長い日照時間などを利用して、ブドウを栽培し、高品質なワイン造りを行っている事がわかりました。
まだ読んでいない方は是非こちらから宜しくお願いします。
今回はさらに北に位置するカナダのワインと極甘口ワイン(アイスワインと貴腐ワイン)について、基礎的な所をまとめます。
カナダのワイン法
カナダのワインは大きく分けて3つのカテゴリーに分けられますが、今回はその中の1つをご紹介します。
ワイン卸商品質同盟(VQA)の基準で認証された高品質ワインがあります。
現在、VQA制度が実施されているのは、これからご紹介するオンタリオ州とブリティッシュ・コロンビア州のみであり、VQAを名乗るためにはその州で栽培されたブドウを100%使用する必要があります。
ワイン産地の風土
夏は晴れの日が多く過ごしやすい気候ですが、冬はとても寒く、年間平均気温で見ると寒冷な地域となるカナダですが、アメリカとの国境近くの温暖な要因のある場所ではブドウ栽培が行われています。
こちらの地図を見ながら読み進めて頂くと、わかりやすいかと思います。
オンタリオ州
地図からもわかる通り、ニューヨーク州の北に位置するオンタリオ州は、カナダのワイン造りが始まった地になります。
この州で重要なブドウ栽培地はニューヨーク州のフィンガー・レイクスAVA近くに位置するナイアガラ半島になります。
ニューヨーク州と同じく、オンタリオ湖の蓄熱によりブドウは生育期間を延ばし、完熟します。
ここでもニューヨーク州と同じく、耐寒性の強いリースリングとヴィダルという白ブドウ品種が栽培されています。
ここからヴィダルという品種についてご説明します。
ユニ・ブランと言う白ブドウ品種とセイベルという黒ブドウ品種を交配して造られた白ブドウ品種
ユニ・ブランはヴィティス・ヴィニフェラ種(ヨーロッパ系ブドウ品種)、セイベルはヴィティス・ラブルスカ種(アメリカ系品種)です。
前回の記事で、ヴィティス・ラブルスカ種とヴィティス・ヴィニフェラ種についてご説明しましたが、もう一度、軽くご説明します。
ヴィティス・ラブルスカ種は病気などには強いが、ワインよりは食用向き、ヴィティス・ヴィニフェラ種は病気には弱いが、瓶内熟成により複雑味が増す、ワイン向きのブドウ品種です。
異なったブドウ種を交配する事をハイブリッド(異種交配)と呼びます。
ハイブリッド種であるヴィダルもまた耐寒性に強いため寒いカナダの地に合っていると言えます。
また最近では、メルローなどの栽培やピノ・ノワールから質の高いワインを造る生産者も増えてきています。
ブリティッシュ・コロンビア州
ブリティッシュ・コロンビア州はワシントン州の北に位置します。
この州で重要なブドウ栽培地はオカナガン・ヴァレーになります。
オカナガン・ヴァレーは海岸山脈とモナシー山脈に挟まれた場所に位置するため、2つの山脈の雨陰となり、雨が少なく1日の日照時間が長くなります。
この場所ではメルローやシャルドネなど様々なブドウが栽培されている他、リースリングやヴィダルも栽培されています。
アイスワイン
ワインに詳しい方は「カナダワイン=アイスワイン」となるかと思います。
先程お話しした、リースリングやヴィダルを使用してカナダは素晴らしいアイスワインを造っています。
ここからアイスワインについてご説明します。
極甘口のデザートワイン
収穫の時期を遅くする事により、樹の上でブドウは凍ります。
この凍った状態のブドウを収穫します。
この時、水分は凍っていますが甘いエキスは凍っていません。
なので、凍った状態のブドウを圧搾することにより、甘いエキスのみを得る事が出来ます。
収穫を遅らせることのリスクや一房から得られるエキスは少量のため、高価なワインとなります。
少し余談になりますが、甘口ワインと言えば「貴腐ワイン」と思う方もいるかと思います。
貴腐ワインとは収穫前の完熟したブドウに、ボトリティス・シネレア菌という貴腐菌を発生させます。
この菌はブドウに穴を空けます。
この穴からブドウの水分が蒸発する事により、甘いエキスが凝縮したブドウが出来上がります。
また、このボトリティス・シネリア菌は貴腐香という独特のハチミツのような香りを生み出すのも特徴です。
綺麗に全てのブドウへ貴腐が広がるわけでは無いので、何度も手摘みで収穫する必要があり、ワインは高額になります。
※貴腐ワインについては後日、もっと詳しくお話ししたいと思います。
シンプルにブドウ本来の甘みを楽しみたい時はアイスワイン、独特な香りと味わいを楽しみたい時は貴腐ワインを選ぶのが良いかと思います。
ワインのご紹介
「カナダといえばアイスワイン」というイメージが強いのですが、最近では辛口のワインも増え、注目を浴びています。
もっとカナダの辛口ワインを知って頂きたいので、今回はアイスワインではなく辛口ワインをご紹介したいと思います。
ワイン名 | Cabernet Franc |
生産者 | 13th Street Winery |
テイスティングコメント | 高い酸味と柔らかいタンニン。 明るくて親しみのあるワイン。 |
まとめ
今回の内容をまとめます。
- カナダのワイン法は大きく3つに分けられ、その1つにオンタリオ州とブリティッシュ・コロンビア州のみで実施されているVQA制度があり、VQAを名乗るためには、その州のブドウを100%使用する必要がある。
- 寒冷な地域のカナダですが、温暖要因のあるアメリカとの国境近くで、ブドウ栽培を行っている。
- ニューヨーク州の北に位置するオンタリオ州にあるナイアガラ半島では、オンタリオ湖の蓄熱を利用してブドウの生育期間を延ばし、ブドウを完熟させている。
- ワシントン州の北に位置するブリティッシュ・コロンビア州にあるオカナガン・ヴァレーは、2つの山に挟まれた場所に位置するため、雨陰となり、雨が少なく1日の日照時間が長くなり、ブドウを完熟させている。
- カナダでは耐寒性の強いリースリングとヴィダルで素晴らしいアイスワインを造っている。
- 白ブドウ品種のヴィダルは、ユニ・ブラン(ヴィティス・ヴィニフェラ種)とセイベル(ヴィティス・ラブルスカ種)を交配させたハイブリッド種(異種交配)である。
- アイスワインは樹の上で凍った状態のブドウを収穫し、ブドウの甘いエキスのみで造る、シンプルにブドウの甘みを楽しめる高価な極甘口ワイン。
- 貴腐ワインは収穫前の完熟したブドウに、貴腐菌を発生させて造る、貴腐香の独特な香りも楽しめる高価な極甘口ワイン。
- カナダでは最近、アイスワイン以外にも様々な品種で高品質な辛口ワインを造っている。
カリフォルニア州以外のアメリカに続き、同じく寒冷な地域、カナダについてご説明しました。
まだあまり知られていないカナダワインですが、高品質なワインが造られていて、注目のワイン産地という事が伝わると嬉しいです。